親を看取ったら税金が13万円増えた話|還暦世代が知らないと損する「扶養が外れた後」の落とし穴

まさかの「介護保険料8万円」通知でフリーズした朝
ある日、市役所から届いた介護保険料の通知書を見て、思わず固まりました。
年額、約8万円。
65歳になったことで、介護保険料がかかる仕組み。しかも追い打ちをかけるように、住民税まで課税されている。トータルで前年より13万円ほど税負担が増えていたのです。
「何かの間違いでは?」と疑いました。でも、計算を追っていくうちに、間違いではないことがわかりました。原因は、ひとつではなく複数が重なっていたのです。
実は私、長く母を扶養に入れていました。その母が亡くなり、扶養控除がなくなった。それだけで、私の税金の世界はガラリと変わってしまったのです。
この記事は、同じアラカン世代——とくに親を看取ったばかりの方に向けて、「あのとき知っておけば慌てずに済んだ」という内容をまとめたものです。制度の仕組みと、実際にやるべき手続きを、私自身が市役所と税務署を行き来しながら整理した順番でお伝えします。
※私は税理士ではありません。この記事は自分が経験して調べた範囲の情報です。最終的な判断は、お住まいの市区町村や税務署に確認してください。とくに金額や段階は自治体ごとに違います。
なぜ税金が一気に増えたのか|3つの要因が同時に来た
私のケースを分解すると、税負担が増えた原因は次の3つでした。
要因1:扶養控除がなくなった
母を扶養に入れていた間は、扶養控除で私の課税所得が大きく下がっていました。とくに70歳以上の同居の親を扶養していると「老人扶養親族(同居老親等)」として控除額が大きくなります。
その控除がそっくり消えたわけですから、課税所得は跳ね上がります。これが、すべての連鎖の出発点でした。
要因2:住民税が「非課税 → 課税」に変わった
ここが、一番じわじわ効いてくるポイントです。
前年までの私は、扶養控除のおかげで住民税が非課税でした。住民税非課税というのは、ただ「住民税がゼロ」というだけの話ではありません。多くの制度の優遇が、この一線で切り替わるのです。
非課税から課税に変わると、
- 住民税そのものがかかる
- 介護保険料の所得段階が上がる
- 各種の非課税世帯向けの軽減・給付の対象から外れる
——と、複数の負担が連動して動きます。私の場合、これが現実になりました。
要因3:介護保険料の「所得段階」が上がった
そして、介護保険料です。
65歳以上の介護保険料は、所得に応じて段階別に決まります。
つまり、扶養が外れる → 住民税が課税になる → 65歳から介護保険料もかかる、というドミノ倒しが起きていたのです。
介護保険料の仕組みを、いちど整理しておく
ここで、介護保険料そのものの仕組みをおさらいしておきましょう。仕組みを知っていると、「なぜこの金額なのか」が腹落ちします。
65歳以上(第1号被保険者)の保険料は「基準額×段階の倍率」
65歳以上の人の介護保険料は、まず市区町村ごとに基準額が決められ、それに所得段階ごとの倍率をかけて算出されます。
基準額は、その市町村の介護サービス費用のうち65歳以上が負担する分(23%)を、高齢者人口で割って計算されます。だから、自治体によって基準額が違うのです。サービスの需要が多い地域や高齢化が進んだ地域ほど、基準額は高くなる傾向があります。
段階は「住民税の課税状況」と「所得」で決まる
所得段階は、ざっくり言うと次のように分かれています。
- 第1〜3段階:世帯全員が住民税非課税(所得によってさらに細分化)
- 第4〜5段階:本人は非課税だが、世帯内に課税者がいる
- 第6段階以上:本人が住民税課税。所得が上がるほど段階も倍率も上がる
国の標準は13段階ですが、自治体によっては最高段階をさらに細かく分けて14段階・15段階にしているところもあります。高所得者の倍率を引き上げて、その分で低所得者の負担を抑える仕組みです。
私が「非課税 → 課税」に変わったということは、第1〜3段階のゾーンから、一気に第6段階以上のゾーンへ移ったということ。倍率でいえば、基準額の0.3倍前後だったものが1.2倍以上になる。これだけで保険料は4倍近くに膨らみます。8万円という金額にも、ちゃんと理由があったわけです。
賦課の基準日は「毎年4月1日」
もうひとつ知っておきたいのが、保険料がいつの時点で決まるかです。
介護保険料の賦課期日(基準日)は、毎年4月1日です。この日時点での年齢・世帯状況をもとに、その年度の保険料が決まります。そして金額の計算には、前年の所得や前年の世帯の課税状況が使われます。
「いつ65歳以上か」を判定するのが4月1日、「いくらか」を計算するのが前年の所得——この二段構えになっている、と覚えておくとスッキリします。
なお、年度の途中で65歳になった人は誕生日の前日が属する月から、転入した人は転入日から、それぞれ月割りで計算されます。
親が亡くなった後に「やるべき税金の見直し」
ここからが、この記事の本題です。私が実際に動いて気づいた「見直しポイント」を、順を追ってお伝えします。
親の扶養が外れた後は、税金まわりに取りこぼしが起きやすい。とくに、毎年同じパターンで申告していた人ほど、同じ穴に毎年ハマっている可能性があります。私がまさにそうでした。
落とし穴1:国民健康保険税の社会保険料控除を入れ忘れていた
申告書を見直していて、血の気が引きました。国保税を社会保険料控除に入れていなかったのです。
国民健康保険税は、れっきとした社会保険料控除の対象です。1年間(1月〜12月)に実際に納めた国保税の額を、所得から差し引くことができます。これを忘れていたということは、本来より高い所得で税額が計算されていたということ。
しかも、これが1年だけではなく複数年にわたっている疑いが出てきました。同じやり方で毎年申告していたなら、令和6年分も、令和7年分も、もしかしたらもっと前も——と、芋づる式に不安が広がっていきます。
落とし穴2:生命保険料控除の証明書を捨てていた
さらに、生命保険料控除の控除証明書(ハガキ)を、よく確認せずに捨ててしまっていました。これも控除のモレに直結します。
ただし、これは慌てなくて大丈夫。控除証明書は、保険会社に連絡すれば再発行してもらえます。私もすぐに再発行を依頼しました。届き次第、申告のやり直しに乗せる予定です。
落とし穴3:「所得税は変わらないが住民税は変わる」ケースがある
ここは少しややこしいのですが、とても大事なところです。
控除のモレを見つけたとき、私は「所得税の更正の請求をしなきゃ」と思いました。ところが市役所で相談すると、**「住民税の申告(修正)だけで足ります」**と言われたのです。
理由はこうです。私の場合、所得税はもともと課税所得がほぼゼロで、控除を足しても所得税額は変わらない。だから所得税の更正の請求をしても意味がない。一方で、住民税は非課税ラインの判定がシビアなので、控除を正しく入れると判定が変わり、結果として介護保険料の段階まで影響する——というわけです。
所得税と住民税では「効くかどうか」が違う。これは覚えておく価値があります。もし所得税でも還付が出るケースなら、迷わず所得税の更正の請求をすべきです。窓口で「住民税だけでいい」と言われたら、その根拠(所得税額が変わらないからなのか)を確認しておくと安心です。
国保税の「払った額」は、こうやって確認する
控除に使うのは「その年に実際に払った国保税の額」です。では、それをどう確認するか。納め方によって方法が変わります。
年金天引き(特別徴収)の場合
年金から天引きされている人は、**年金保険者(日本年金機構など)が発行する「公的年金等の源泉徴収票」**に、1年間に納めた保険料の額が記載されています。これを見れば一発です。
納付書・口座振替(普通徴収)の場合
納付書や口座振替で払っている人は、領収証書、または口座振替なら通帳の記帳記録で確認します。
領収書を捨ててしまった私のような人は、市役所で**「納付済額確認書(申告用)」**を発行してもらえます。本人確認書類を持って窓口に行けば、世帯主名で世帯ごとの金額を出してもらえます。複数年分まとめて頼むのが効率的です。
申告に「証明書の添付」は不要
うれしいことに、国保税を社会保険料控除として申告するとき、領収書や証明書を申告書に添付する必要はありません。合計額を計算して申告書に記載すればOKです。これは国税庁の手引きでも明記されている扱いです。
見落としがちな「2つの裏ワザ的ポイント」
私が調べていて「これは知らないと損だ」と思ったポイントが2つあります。
ポイント1:暦年で振り分ける(年度ではなく)
国保税は「年度(4月〜翌3月)」で動きますが、社会保険料控除は**「暦年(1月〜12月)で実際に払った額」**で考えます。
ここがズレやすい。たとえば「令和5年度分」の国保税でも、実際に支払ったのが令和6年の1〜3月なら、それは令和6年分の控除に入ります。
控除対象には、納期未到来分や過年度(前年度以前)の分を払った額も含められます(ただし延滞金は対象外)。「何年度の国保税か」ではなく「何年に払ったか」で振り分ける——これが取りこぼさないコツです。
ポイント2:親の国保税も自分の控除に入れられることがある
口座振替で世帯の国保税を払っていた場合、口座名義人の社会保険料控除になるのがルールです。
つまり、世帯主である自分の口座から、同じ世帯だった親の分の国保税も払っていたなら、親の分も含めて自分の控除に入れられる可能性があります。亡くなった親の分が、まだ反映されていないかもしれません。ここは結構大きい場合があります。
さかのぼれる期間はどれくらい?
「過去の分も直せるの?」という疑問が当然わいてきます。
所得税の更正の請求:原則5年
所得税で還付が出るケースの「更正の請求」は、原則として法定申告期限から5年です。たとえば令和4年分の所得税の申告期限は令和5年3月15日なので、令和10年3月15日までは請求できる計算になります。まだ間に合う年が多いはずです。
住民税の修正:基本5年だが「効果が出るか」がカギ
住民税側の救済期間も基本は5年です。ただし現実的には、その年に課税だったか非課税だったかで、直す意味があるかどうかが変わります。
- もともと非課税だった年 → 控除を足してもこれ以上下がらないので、直しても戻るものがない
- わずかに課税されていた年 → 控除追加で非課税に戻り、住民税・介護保険料・各種給付がさかのぼって変わる可能性がある
だから、過去の年を見直すときは、まず「その年は課税だったか非課税だったか」を確認するのが先。ここで先に足切りできれば、ムダ足を踏まずに済みます。
過去の申告内容はマイナポータルで確認できる
「昔の申告書なんて手元にない」という人でも大丈夫。マイナポータルから、
- e-Taxで出した過去の申告データ(社会保険料控除欄にいくら入っているか)
- 「わたしの情報」からの課税・所得情報(課税だったか非課税だったか)
を確認できる場合があります。紙で提出していてデータが残っていない年は、税務署の**「申告書等閲覧サービス」**で過去の自分の申告書を閲覧できます(本人がマイナンバーカード等を持参すれば、写真撮影も可能です)。
私がこれからやること(チェックリスト)
最後に、私自身の「やることリスト」を共有しておきます。同じ立場の方は、そのまま使ってみてください。
- 過去数年分の確定申告書の控え、または申告内容をマイナポータルで確認する
- 各年が「課税」だったか「非課税」だったかをチェックする
- 国保税の納付済額確認書を、市役所で複数年分まとめて発行してもらう
- 国保税を「払った年(暦年)」で正しく振り分ける
- 親の分の国保税が自分の口座から出ていなかったか確認する
- 生命保険料控除の証明書を保険会社から再発行してもらう
- 「所得税の更正の請求が要るのか/住民税の申告だけでいいのか」を窓口で確認する
- 効果が出る年だけ、優先順位をつけて手続きする
おわりに|悲しみの後に、事務手続きはやってくる
親を看取った後というのは、心の整理だけでも大変です。そこへ、税金や保険料の事務手続きが容赦なくやってきます。正直、しんどい。
でも、ここで一歩踏ん張って見直すかどうかで、戻ってくるお金も、これから払う保険料も変わってきます。私のように「毎年同じモレを繰り返していた」というケースは、決して珍しくないはずです。
もしこの記事を読んでいるあなたが、最近親御さんを見送ったばかりなら——落ち着いたタイミングで構わないので、一度ご自身の申告内容を見直してみてください。そして、わからないことは遠慮なく市役所や税務署に聞きにいきましょう。彼らは、ちゃんと教えてくれます。
私も、しっかり調べてから市役所に行ってきます。結果はまた、この場で報告しますね。
この記事は、元地方公務員でアラカン世代の筆者が、実際に直面した出来事をもとに書いています。制度は改正されることがあり、金額や段階・取り扱いは自治体によって異なります。手続きの際は、必ずお住まいの市区町村・税務署の最新情報をご確認ください。
