熱すぎる闘い:G1クライマックス

真夏の祭典「G1 CLIMAX 36」が、今年も熱く燃えています。
7月11日にシカゴで開幕し、8月15日・16日の両国国技館2連戦で優勝が決まる約1か月の長丁場。20選手がA・B2つのブロックに分かれ、総当たりのリーグ戦を闘い抜きます。
私も毎年この時期を楽しみにしている一人ですが、今年のG1は少し様子が違います。
まだ各選手が3試合ほど消化しただけの序盤戦だというのに、レフェリーストップで決着する試合が続出しているのです。
選手が失神状態のままマットに沈み、レフェリーが試合を止める。そんな光景を、この短期間で何度も目にすることになるとは思いませんでした。
「熱い闘いが見たい」というファン心理と、「選手の体が心配だ」という気持ち。その両方を抱えながら観戦している方も多いのではないでしょうか。
今日は、ここまでの序盤戦を振り返りながら、そのあたりの想いを書いてみたいと思います。
Yuto-Ice、2試合連続の失神負け
今大会でもっとも心配なのが、Yuto-Ice選手です。
7月18日の札幌大会では、ヤングライオン時代の同期であるボルチン・オレッグ選手とのシングルマッチが実現しました。
若手時代から同じ釜の飯を食ってきた二人の対決は、序盤から張り手とエルボーを打ち合う壮絶な消耗戦に。
Iceは得意の蹴りを軸に攻め込み、必殺のCruellaやAMBITIONで勝負に出ますが、ボルチンの強靭な肉体がそれを上回りました。
終盤、ボルチンが両足を掴んでの「餅つき式パワーボム」で豪快にマットへ叩きつけると、レフェリーが危険と判断して試合をストップ。ボルチンのレフェリーストップ勝ちとなりました。
試合後、ボルチンは「これがプロレスハイか?」と語りかけたそうです。相手の最高を引き出そうとするIceの闘い方が、逆にボルチンという「野獣」を目覚めさせてしまった。そんな試合でした。
そして7月21日の仙台大会。首にテーピングを施したIceは、コウノスケ・タケシタ選手と対戦します。タケシタはパワーボムのダメージが残るIceの首を執拗に攻め、ヘッドシザースやクロスフェイスで追い込んでいく。
それでもIceは、ウィルバロー式スープレックスからのラリアットをカウント1で跳ね返し、場内を沸かせました。
しかし最後は、パワードライブニーからのチキンウィングを絡めたスリーパーで、Iceは完全に落ちてしまいます。2試合連続の失神によるレフェリーストップ負け。試合後、自力で立ち上がることもできませんでした。
負けても負けても、絶対にギブアップしない。倒れるときは前のめり。その姿勢がファンの心を掴んでいるのは間違いありません。
会場の声援は、今大会屈指のものがあります。ただ、還暦を過ぎた私のような世代からすると、「大丈夫か、体は」と、つい親のような目線で見てしまうのです。
ボルチン・オレッグの覚醒
一方、Iceを破ったボルチン・オレッグ選手は、初戦を落とした後に完全にエンジンがかかりました。
Ice戦での勝利を皮切りに、7月21日には元IWGP世界ヘビー級王者・鷹木信悟選手からピンフォール勝ち。メインイベントでの大金星です。
サンボ仕込みの投げとパワーは、もはやAブロック随一。普段は冷静なボルチンが、リミッターを外して闘う姿には鬼気迫るものがあります。
Ice戦の後には「G1優勝」を口にしたとも報じられており、STRONG無差別級王者としての自信が本物になりつつあるのを感じます。
ゲイブ・キッドの暴走と「イッポン!」
Bブロックで話題を独占しているのが、AEW所属の外敵にしてIWGP GLOBALヘビー級王者、ゲイブ・キッド選手です。
開幕戦ではかつての盟友ドリラ・モロニー選手に敗れる波乱のスタート。
しかしその後は、ベルトを無造作に放り投げ、対戦相手にジャージを投げつけるなど、傍若無人な振る舞いで会場の空気を支配していきます。
7月19日のOSKAR戦では、噛みつきやイス攻撃といったラフファイトの末に、必殺のドリル・ア・ホール・パイルドライバーを2連発。自力での初白星を挙げました。
そして7月22日の長岡大会。柔道金メダリストからプロレスラーに転身したNEVER無差別級王者・ウルフアロン選手との「王者対決」が実現します。
ゲイブは青い柔道着姿で入場し、白い柔道着をウルフに投げつけて挑発。ウルフはあえてその道着に袖を通し、柔道仕込みの投げ技を連発して主導権を握ります。
場外での豪快な裏投げ、雪崩式のハリケーンドライバーと、ウルフの猛攻は見事でした。
しかし最後は、ゲイブの狡猾さが上回りました。
ウルフがEVILを落とした逆三角締めで攻めましたが、ゲイブは急所攻撃で窮地を脱すると、強烈なニーリフトからドリル・ア・ホール・パイルドライバーで突き刺し、3カウント。
試合後には「イッポン!」と、柔道家ウルフへの屈辱的なアピールまで飛び出しました。憎らしいけれど、目が離せない。悪役の教科書のような存在です。
この敗戦で、両ブロック通じて唯一無敗だったウルフに土がつき、序盤戦にして早くも全勝者ゼロ。今年のG1は、本当に誰が優勝するのか読めない大混戦となっています。
最後まで闘い続けられる選手は何人いるのか
さて、冒頭に書いた心配ごとに戻ります。
レフェリーストップの続出、2試合連続で失神するYuto-Ice、肋骨をテーピングで固めながら闘う大岩陵平選手、そして海野翔太選手の欠場。
まだリーグ戦は序盤だというのに、すでに満身創痍の選手が目立ちます。G1は約1か月、各選手が9試合のシングルマッチを闘い抜く過酷なトーナメントです。
ここまで真剣勝負の消耗戦を続けて、果たして何人が万全の状態で両国にたどり着けるのか。
昔からG1は「真夏の最強戦士決定戦」と呼ばれ、体力の限界との闘いでもありました。それでも、今年の激しさは近年でも際立っているように感じます。
レフェリーストップという決着が増えたこと自体、「ギブアップしない選手たち」と「選手を守るレフェリー」のせめぎ合いの表れなのでしょう。
選手の安全は何より大事です。
一方で、限界を超えてなお立ち上がろうとする姿にこそ、私たちは心を打たれる。
この矛盾した気持ちを抱えたまま、それでも今日も星取表をチェックしてしまうのが、プロレスファンというものかもしれません。
願わくは、大きな怪我なく、できるだけ多くの選手が最終戦のゴングを聞けますように。
そして8月の両国で、今年一番熱い男の雄叫びを聞けることを楽しみにしています。
※本記事の内容は2026年7月22日の長岡大会終了時点のものです。

