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エッセイ

「数学的頭脳には定義がある」とは? 真言密教から考える「文系の定義」

「数学的頭脳には定義がある」とは?の文字。中央に丸と三角の定義が文字と数式で書かれている
文系の定義
noira.0453@outlook.jp
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ハウル
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みなさんこんにちは。ハウルブログです。今日も元気にお過ごしでしょうか。

人生100年と言われる時代です。還暦(60歳)を過ぎても、まだ残り40年あります。このブログが、還暦を過ぎたみなさまにとって何かのヒントになればと思い、書き続けています。

今日は「数学的頭脳」について書いてみます。

「文系脳には定義がない」にドキッとした話

結論から言うと、「数学的頭脳には定義がある」とは「言葉の意味を先に決めてから考える習慣」のことです。そして文系の世界にも、実はこの習慣はちゃんとあります。今回は、大好きな真言密教を手がかりにそれを確かめてみました。

きっかけは、MBSラジオ「上泉雄一のええなぁ!」の公式YouTubeで配信されているポッドキャストでした。経済学者の高橋洋一さん(嘉悦大学教授)が「数学的な頭には定義がある。文系の頭には定義がない」と言い切っていたのです。

高橋さんは東京大学の理学部数学科を出て、経済学部でも学び、大蔵省(現・財務省)に入った方です。数学と行政の両方を知る人の言葉だけに、重みがあります。

とはいえ、筋金入りの文系の私としては少々ムッとしました。「じゃあ私は、定義という地図を持たずに歩いてきたのか?」と。

そこで腹を立てる前に、まず「定義とは何か」から考えてみることにしました。ムッとしたら定義から。これがもう数学的頭脳への第一歩かもしれません。

数学における「定義」とは何か

数学の定義とは、「この言葉はこういう意味で使う」と最初に決めてしまう約束です。決めたら最後まで、その意味から一歩もはみ出しません。

たとえば「偶数」。なんとなく「2、4、6みたいな数」と覚えている人が多いと思います。数学ではこう決めます。

  • 偶数とは、2で割り切れる整数のこと

こう決めておくと、0は偶数か?という問いにも迷いません。0は2で割り切れるので偶数です。「なんとなく」で覚えていると、ここで意見が割れて、居酒屋で30分は揉めます。

数学はこの約束の上に、公理(証明なしで認める前提)と論理を積み重ねていきます。土台の言葉の意味が一つに決まっているから、誰が考えても同じ結論にたどり着けるわけです。

高橋さんの本『数学を知らずに経済を語るな!』には「定義に無頓着な人は騙される」という章まであります。たとえば「財政破綻」「借金」という言葉を、どの数字のことか決めずに使うと、話の印象だけに振り回されてしまう。高橋さんが言いたいのは、まさにそこでしょう。

つまり「数学的頭脳に定義がある」とは、計算が速いことではありません。議論を始める前に、言葉の中身を固定する習慣があるということなのです。

なぜ「文系には定義がない」と言われるのか

高橋さんの言う「文系」は、学問の分類というより「言葉の意味を決めずに議論する話し方」を指していると考えると、すっと腑に落ちます。

思い当たる場面は、日常にたくさんあります。

  • テレビのコメンテーターが「景気が悪い」と言うが、何の数字が悪いのかは言わない
  • 会議で「もっと住民の声を聞くべき」と決まるが、何人に、どう聞くかは決まらない
  • 夫婦げんかで「あなたはいつもそう」と言われるが、「いつも」が何回なのかは誰も数えていない

最後の例は、わが家でも年に数回発生します。定義しないまま議論すると、最後は声の大きさと気分で勝負が決まります。数学の人から見れば、これは土台のない家に二階を建てているようなものです。

もう一つの理由は、文学や哲学の言葉がもともと「幅」を楽しむものだからでしょう。「愛とは何か」を一行で定義したら、恋愛小説は一冊も書けません。あいまいさに味わいがある。これが文系の豊かさでもあり、同時に弱点にもなるわけです。

では、文系の世界には本当に定義がないのか。ここで登場するのが、私が長年あこがれてきた空海さんの教え、真言密教です。

真言密教にある緻密な「定義」の体系

真言密教は、宗教という「文系」の世界にありながら、驚くほど定義がきっちりした教えです。空海さんは、言葉の意味を先に決め、その上に理論を積み上げる人でした。

いちばん分かりやすいのが「即身成仏」です。「この身のままで仏になる」と聞くと、ふわっとした精神論に聞こえます。ところが空海さんは『即身成仏義』の中で、これを三つの要素で定義しています。

要素意味数学でいうと
六大(体)地・水・火・風・空・識の六つが、世界と仏の本体公理(出発点)
四曼(相)四種類の曼荼羅で、その姿を表す図・表現の約束
三密(用)身(印を結ぶ)・口(真言を唱える)・意(心を仏に向ける)のはたらき操作・手続き

本体、すがた、はたらき。この三段で「即身成仏とは何か」を組み立てているのです。どうでしょう。公理を置き、表現を決め、手続きで結論を導く。まるで数学の教科書の構成です。

ほかにも、空海さんは『弁顕密二教論』で、顕教と密教の違いを項目ごとに定義して区別しました。さらに『十住心論』では、人の心のあり方を十の段階に分けて、一つずつ位置づけています。これはもう分類と定義の一大プロジェクトです。

1200年前の文系の大先輩が、こんなに「定義のある頭」を持っていた。私はここで、ちょっと胸を張りたくなりました。

文系にも定義はある——違いはどこにあるのか

文系にも定義はあります。違うのは「定義の閉じ方」です。数学の定義は紙の上で完結しますが、密教の定義は体験によって完成します。

身近な文系の例も挙げておきます。法律には、条文の最初のほうに「この法律において○○とは、△△をいう」という定義規定がずらりと並びます。会計にも「資産」「負債」の厳密な定義があります。文系の実務は、むしろ定義なしでは一日も回りません。

では、数学の定義と何が違うのか。比べてみるとこうなります。

比べる点数学の定義真言密教の定義
決め方言葉だけで完全に決める言葉で枠を決め、修行で中身を満たす
確かめ方論理で証明する身・口・意の実践で確かめる
解釈の幅ゼロにする段階に応じて深まる

密教は、文字どおり「秘密の教え」です。言葉で説明しきれない部分は、師から弟子へ、実践を通して伝えるとされます。ここが数学との一番の違いです。言葉の外側に、もう一段の確かめ方を持っているのです。

こう考えると、高橋さんの「文系には定義がない」は、少し言い換えたほうが正確かもしれません。文系に定義がないのではなく、定義をせずに語る人が多い。そして定義を大切にした文系の人は、昔からちゃんといた。空海さんがその証拠です。

60代からの暮らしに活かす「定義する力」

「定義する力」は、数学が苦手な人でも今日から使えます。コツは、話し合いの前に「その言葉、どういう意味で使う?」と一言そろえることです。

私は自治会長をしていますが、会合でも効き目があります。たとえば「行事の負担を減らそう」という話。「負担」を「準備にかかる時間」と決めるか、「出費」と決めるかで、出てくる案はまるで違います。先に決めておくと、話が半分の時間でまとまります。

これはプロジェクトを組むときも同じです。プロジェクトを組むときには、実は二つのことを決めています。

一つは「何をもって成功とするか」「どこまでがこのプロジェクトの範囲か」といった、言葉の中身を決める部分。これはまさに定義です。

もう一つは「誰が、いつ、何をするか」という段取りで、こちらは計画です。先に成功と範囲を定義しておけば、計画の途中で迷っても「それは目的に役立つか?」で判断できます。

暮らしの中で試しやすい場面を挙げてみます。

  • ニュースを見るとき:「過去最大」「急増」と聞いたら、何の数字の、いつと比べてかを確かめる
  • お金の話:「老後資金が足りない」の「足りない」を、毎月いくらの不足かに置き換える
  • 健康の目標:「体を動かす」ではなく「週3回、30分歩く」と決める
  • 家族との会話:「ちゃんとして」の「ちゃんと」を、具体的に何をすることか聞いてみる

最後のは、聞き方を間違えると火に油なので、笑顔でどうぞ。

密教から学べることもあります。定義は頭で決めて終わりではなく、体で確かめて初めて自分のものになる、ということです。

「週3回歩く」と決めたら、実際に歩いてみる。歩いてみて、無理なら定義を直す。

これは三密の考え方を、暮らしに小さく取り入れたものだと言えるかもしれません。

まとめ:文系の頭にも、定義という骨組みを

「数学的頭脳には定義がある」とは、言葉の意味を先に固めてから考える習慣のことでした。そして文系にも定義はあり、真言密教はその見事なお手本です。

高橋さんの「文系には定義がない」は、刺激の強い言い方です。けれど、定義せずに語る怖さを教えてくれる、ありがたい警告でもあります。ムッとした分だけ、学びがありました。

空海さんは言葉で枠を決め、実践で中身を満たしました。数学は言葉だけで完全に決めます。どちらも「定義のある頭」です。違いは、確かめ方にあるだけでした。

文系の私も、今日から会話の前に一言、「それって、どういう意味?」。長年使ってきたこの頭に、定義という柱をもう一本立ててみようと思います。

参考

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ハウル
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自由を目指すアラカン
「人生100年時代」をともに生きるあなたへ。
何かヒントになればと思い2022年11月にブログをスタートしました。
旅(神社仏閣巡り)・還暦野球・ゴルフやってます。

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